メディア・リテラシー


今回のコラム担当は、Bridge for Children, KGU 2回生の田辺大空です。

今回は、「メディア・リテラシー」というテーマで書かせていただきます。

 

今、アメリカを中心に、世界中で黒人に対する人種差別の抗議デモが起きています。日本にいる私たちは、テレビのニュースやSNSなどでその情報を見ているのではないかと思います。私は特にインスタグラムやツイッターなどで情報を収集していましたが、その中には嘘の情報や、誤解を招くような動画もあり、何が真実で何が嘘なのかを考えながらそれらを見なければなりませんでした。

例えば、この世界的なムーブメントの発端となったジョージ・フロイドさんの警察による殺害の動画があります。もちろん、警察官がフロイドさんを明らかに過剰に押さえつけ、窒息死させた事実やそれが人種差別的な要素を含んでいるのは事実であり、許されるべきではないことです。しかし、この動画を批判的に見るとフロイドさんが拘束される前の動画があまりなかったり、そうなるに至った事情については多く書かれていなかったりという面があります。

他にも、抗議デモの最中に警察官がデモ隊に対し暴力をふるったりしている動画が多くありますが、その中にはデモ隊が先に手を出している場面をカットしている動画があったり、平和的なデモの中でとある記者がより過激に見えるように銃声の音声を流しながら撮影をしているのがみつかったりと恣意的に操作されているような動画がたくさんあります。テレビやSNSなどのメディアを通した情報は、作り手のバイアスが意図的かそうでないかを問わず、反映されてしまうと言われていますが、これらの例はそれを象徴するものであると思います。あるメディアは、この社会的な動きを使ってトランプ大統領のイメージを下げるような明らかな編集を行っていたり、ある差別主義者はフロイドさんの犯罪歴のみにフォーカスを当てて警察の行為を正当化しようとしたりしている人もいました。

 

これは、今回の人種差別問題に限ったことではありません。私たちの日常はたくさんの情報が溢れかえっています。何が真実かということは重要な事です。しかし、メディアを通して見る事実というのはメディアが作り出したものであり、様々なバイアスがかかっています。私たちがメディアと付き合っていく上で自分たちが見た情報を鵜呑みにせず、批判的に見るということは必要不可欠です。しかし、その時に大事なのは何が正しくて何が間違っているのかをその情報だけで決めつけるのではなく、一歩引いた視点からそれぞれの情報について発信者の背景や意図を考察することです。私たちが見るべきはそれらを総合した、より客観的な情報(事実)なのです。これからさらに情報化された社会になっていくことを考えると、この能力を今からでも身につける価値があると私は思います。